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<目次>
全体の研究紹介
有機材料とはどのようなものか
高分子材料
高分子錯体
電気・光機能性高分子材料
有機太陽電池の材料設計
・π共役高分子錯体に関する研究
電気・光機能性を有する有機ナノ材料に関する研究



<π共役高分子錯体に関する研究>
 そこで着目したのが、π共役高分子錯体という新しい物質群です。これまでは、金属錯体の機能を材料として用いやすくするために(本当はそれだけではありませんが)、高分子錯体化しているものが大半でした。そこで用いられてきた高分子は、単結合のみからなるものであり、電気機能という視点から見ると向いておらず、ほとんど研究されてきませんでした。当研究室では、様々な電気・光機能性を発現するπ共役高分子と金属錯体を融合させることにより、これまでにない新しい機能を引き出すことを目指しています。当研究室ではこれまでに、錯形成部位を導入したπ共役高分子を合成し、それが、金属イオンとの錯形成により有機ELや有機太陽電池の特性が向上することを明らかにしています。
 例えば、金属との錯体化が可能な部位(C=N結合)を有機EL素子のホール(電荷)輸送層に導入した新たな有機材料を合成しました。この材料が金属イオンと錯形成したものを有機EL素子に用いると、錯形成させていないものと比べて素子の発光効率が大きく向上することを発見しました。



 また、この錯形成による素子特性の向上効果が有機太陽電池にも適用できるかを検討するために、有機太陽電池用π共役高分子の側鎖部分に錯形成部位を導入した有機材料を合成しました。この材料が金属イオンと錯形成したものをバルクヘテロジャンクション型有機薄膜太陽電池に用いると、太陽電池特性において重要なパラメータの一つである開放電圧(Voc)が向上することが明らかになりました。



 以上のように、π共役高分子錯体による有機電子素子における特性の向上を既に見出しています。これらはπ共役高分子単体ではなしえないものであり、従来のπ共役高分子の設計指針に加えて、適用することができます。また、このアプローチは、高分子における錯形成によるものであり、高分子の重合度n(分子量)そのものは変化しないため、有機太陽電池の材料設計で示した問題の一つをクリアすることができます。このアプローチにより、π共役高分子そのものの機能を越えた新しい有機電子材料を創出することができると考えています。



 本研究は2015年度から甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成金の助成を受けて行われています。

→ 電気・光機能性を有する有機ナノ材料に関する研究