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<目次>
全体の研究紹介
有機材料とはどのようなものか
高分子材料
・高分子錯体
電気・光機能性高分子材料
有機太陽電池の材料設計
π共役高分子錯体に関する研究
電気・光機能性を有する有機ナノ材料に関する研究



<高分子錯体>
 高分子錯体とは、広義には高分子がある物質(有機物・無機物、高分子・低分子問わない)と様々な相互作用により結合した幅広い物質群ですが、ここでは狭義である「高分子と金属を含むもの」を高分子錯体とよぶことにします。つまり、金属錯体化した高分子、または高分子化した金属錯体を高分子錯体とよびます。
 金属錯体は金属と非金属の原子(配位子)が結合した構造をもつ化合物です。この金属錯体は、無機物、有機物とは異なる性質を示すことが多く、特に光、電気、磁気、触媒機能を活かした応用が注目されています。私たちの身の回りにもたくさんあり、例えば、血液中に含まれるヘムb、カラープリンタの水色(シアン)の顔料である銅フタロシアニン、抗がん剤として用いられるシスプラチンなど、挙げ始めればきりがありません。



 高分子錯体は、金属錯体と高分子の両方の機能を併せて持たせることができます。高分子は成型加工性に優れ、塗って乾かすことで薄膜を作ることもできますし、自立膜を作ることもできます。一方、金属錯体は上に挙げた様々な機能を持たせることができる一方、材料としてはやや使いにくいという問題も有しています。また、高分子と金属錯体の組み合わせは多様な組み合わせがあり、様々な機能を持った有機材料を創出できると期待されています。では、高分子と低分子である金属錯体をただ単に混合させたものでは、同じような機能が得られるかといえば、必ずしもそうはなりません。というのも、薄膜を作製する場合、高分子と金属錯体は結合で結ばれていないので、その乾燥過程(溶媒がいる状態)では自由に動き回ることができます。高分子や金属錯体は、通常似たもの同士で集まりやすいため、高分子中に金属錯体が分子レベルで分散することは無く、高分子中で金属錯体が凝集してしまい(相分離)、本来の機能を発現させることはできません。



 高分子錯体はいくつかのタイプがありますが、多くは高分子主鎖が単結合(σ結合)からなる高分子の側鎖に金属錯体を導入したものが多く報告されており、さらに、合成の都合上、ポリスチレン(発泡スチロールに用いられている)のベンゼン環に金属錯体が結合したものが多く報告されています。これらは金属錯体の機能にポリスチレンの機能(加工性、成型性、製膜性など)が加わることで高分子材料として用いることができます。



→ 電気・光機能性高分子材料