Home全体の研究紹介→有機太陽電池の材料設計



<目次>
全体の研究紹介
有機材料とはどのようなものか
高分子材料
高分子錯体
電気・光機能性高分子材料
・有機太陽電池の材料設計
π共役高分子錯体に関する研究
電気・光機能性を有する有機ナノ材料に関する研究



<有機太陽電池の材料設計>
 21世紀のエレクトロニクスを支えることが期待されている有膜太陽電池は最近の環境・資源・エネルギー化学に関する関心から注目が集まっています。特に効率の面では、最近になって変換効率10%を超えるようになり、他の素子と比べても遜色がない状況になっています。さらに有機太陽電池の最大の利点は、将来的に印刷プロセスを適用することで低コスト化が可能となり、他の太陽電池と比較してエネルギーペイバックタイム(素子を作製したエネルギーを回収するのに必要な期間)が抑えられます。最近では、優れた有機材料の開発や、理想的なp/n界面・p/nドメインサイズの形成(p型材料とn型材料の混ざり具合)を制御する研究が大半を占めています。当研究室では、塗布系にこだわり、新しいコンセプトを提案することで有機太陽電池の高性能化を目指しています。


 有機太陽電池の心臓部である活性層(発電する層)は様々な構造を有する有機電子材料が用いられています。これらは多様な原料から多段階の有機合成過程を経て得られます。有機電子材料の長所は有機化学的な手法により、その性質を容易に変化させることができる点です。例えば、有機太陽電池用途では分子を設計することで、太陽光を効率よく吸収できる色素を生み出すことができます(λmax:その材料が最もよく吸収できる光の波長)。


 しかし、上述したようにただ太陽光を吸収しやすい有機材料を開発しても、それがそのまま太陽電池の高効率化につながるわけではありません。最も大きな問題は有機太陽電池は二種類の有機材料を使用することからもたらされます。有機太陽電池は、現在広く普及しているシリコン太陽電池と同様に、p型半導体(プラスの電荷を運ぶもの)とn型半導体(マイナスの電荷を運ぶもの)で構成されています。ただし、塗布法により作製する有機太陽電池は、一層目の上に二層目を塗ると二層目の溶剤が下地を溶かしてしまい、積層させることが困難なため、p型有機半導体とn型有機半導体がいい具合に混ざり合った混合膜(バルクヘテロジャンクション)から成り立っています。


 二種類の材料の混ざり具合は、用いる有機材料の構造(例えば高分子ならば上図のカッコの中と重合度n)に依存します。世界中の有機太陽電池用材料(p型有機半導体、n型有機半導体)の開発は、新しい構造を有する材料を合成し、それを太陽電池に組み込んで〇%という研究が主流です。しかし、実際には有機電子材料に用いられる高分子の重合度nを制御することはあまりできていません。ですので、得られた効率の絶対値で良し悪しを議論することはできても、それが有機材料の化学構造によるものなのか、p型有機半導体とn型有機半導体の混ざり具合によるものなのかを有機材料間で比較することは極めて困難であるといえます。


→ π共役高分子錯体に関する研究