Home全体の研究紹介各グループの研究紹介→有機電子材料化学




有機薄膜太陽電池は最近の環境・資源・エネルギー化学に関する関心から注目が集まっている。特に効率の面では、最近になって変換効率10%を超えるようになり、他の素子と比べても遜色がない状況になっている。さらに有機薄膜太陽電池の最大の利点は、将来的に印刷プロセスを適用することで低コスト化が可能となり、他の太陽電池と比較してエネルギーペイバックタイム(素子を作製したエネルギーを回収するのに必要な期間)が大きく抑えられる。最近では、優れた有機材料の開発や、理想的なp/n界面、p/nドメインサイズの形成を制御する研究が大半を占めている。そこで、塗布系にこだわり、新しいコンセプトを提案することで有機薄膜太陽電池の高性能化を目指す。


有機薄膜太陽電池の心臓部である活性層(発電層)は様々な構造を有する有機電子材料が用いられる。これらは多様な原料から多段階の有機合成過程を経て得られる。有機電子材料の長所は化学修飾により、その性質を容易に変化させることができる点である。例えば、有機薄膜太陽電池用途では分子を設計することで、太陽光を効率よく吸収できる色素を生み出すことができる。当グループでは有機化学的な手法により種々の電子状態を有する有機電子材料を合成し、さらに以下の3つのアプローチにより付加価値を加え、オンリーワンの材料を創出することを目指す。



1. メタロ有機エレクトロニクスの深化
高分子錯体を有機エレクトロニクス素子、特に有機薄膜太陽電池に適用することにより、従来の純有機材料では実現しえなかった新しい機能の創出を狙う。具体的には、金属との錯形成に伴う、π共役高分子主鎖の電子状態制御、ネットワーク構造構築に伴うドメインサイズの制御を通して、有機薄膜太陽電池の高性能化を狙う。



2.π共役高分子の直接化学修飾による物性制御
π共役高分子そのものの高性能化を狙い、高分子反応により機能性部位を導入する方法論の確立を狙う。従来はモノマーレベルでの有機合成化学的なアプローチによってしか実現できなかったが、π共役高分子そのものをモジュールとして利用することで新しいタイプの材料合成を目指す。この方法論を確立することで、分子レベルのp/n接合界面の構築、増感色素の導入、安定なp/n接合界面を実現できるp/n両層に相溶性を有する界面活性高分子など、従来法では困難であった様々な展開が期待できる。


3. 新プロセスを志向した新規材料の合成と組織化体の物性解明
プロセス面からの設計として、新しいプロセスに適合した新材料の創製を目指したい。新しい製膜プロセスとしてESD法、すなわち静電スプレー法と電解重合法が最近注目されているが、これまでは既存の材料系の検討に留まっていた。これらの製膜法の特徴は特殊なナノ構造を容易に形成できることと、積層が可能であり、これまでの塗布系では考えられなかった素子構造が作製できる点である。さらにその特殊なナノ構造由来の特異な電気物性も見出しており、新プロセスによって形成されるナノ構造と材料の一次構造との相関を解明、高効率化のための要件を確立することにより、素子の高性能化へとつなげられると考えている。