【高分子材料化学分野】
無機/有機複合新素材の開発と物理化学的特性解析
無機化合物と有機化合物とが分子レベルで組み合わさった無機・有機複合材料は、多くの分野で使用されており、新素材開発も活発に行われています。無機・有機のナノスケールでの複合化は有機物・無機物それぞれの特性を生かすのみならず、それぞれの素材とは全く異なった高機能性材料を創出する新しい技術として期待されています。
そこで、環境・光・エレクトロニクスなどの分野での応用を視野に入れた無機・有機複合新素材の開発や物理化学的特性の解析など、材料開発における基礎的研究を行っています。
1.ポリマーの加工特性および力学特性の解析
身の回りには、様々なプラスチック製品やゴム製品があります。それらの製品は、原料であるゴムやプラスチックなどのポリマーは、充填剤や可塑剤などが配合されています。このようなポリマーの成形加工時に重要となる、溶融ポリマーの流動挙動の基礎的研究は、余り行われていません。
そこで本研究室では、エチレンプロピレンゴム(EPM)にオイルを添加した系スチレン-ブタジエンゴム(SBR)にカーボンブラックとシリカを配合した系において、流動挙動について基礎的研究を行っています。
充填剤補強ポリマーの加工特性と力学的特性の解析
本研究では、自動車用タイヤなどに使用されるスチレン-ブタジエンゴムにカーボンブラック(炭素の微粒子)とシリカ(二酸化ケイ素の微粒子)を配合した系において、カーボンブラックおよびシリカの配合量、ならびに加工助剤など添加剤が、流動特性に与える影響について基礎的研究を行っています。
オイル添加ポリマーの加工特性と力学的特性の解析
本研究では、汎用ゴムであるエチレン-プロピレンゴムにオイルを添加した系において、オイルの種類および添加量が、流動特性に与える影響について基礎的研究を行っています。
2.機能性を有するポリマーの合成と特性解析
撥水性機能膜の開発
近年、有機材料と無機材料をハイブリットすることにより新たな機能を発現させようという研究が成されている。当研究室では、水をはじく性質つまり撥水性が高い材料の開発を行っている。
新規アクリルゴムの開発
本研究では、アクリル酸エチルを主モノマーとして乳化重合を行い、工業用途に耐え得る性能を持つアクリルゴムが得られる条件を検討しています。
帯電防止ポリマーの開発
近年、携帯電話などのような電子機器の小型化が急速に進み、ハウジング材であるポリマーの絶縁性のため静電気ショックによる誤作動などが問題となっています。
当研究室では、強靭性、耐衝撃性に優れるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂にメタクリル酸をグラフトし、これに金属塩を導入したアイオノマーを作製し、その帯電防止効果を検討しています。
金属微粒子分散型ポリマーによる機能性複合材料の作製
分散相がナノメータ・サイズに超微細化されると、表面積が大きくなり、表面エネルギー効果や異種分子、原子間に軌道変換を起こさせるような、分子間相互作用が働き、特異な現象が現われて、バルクとは異なる特性をもつハイブリッド材料を得ることができます。高機能性のハイブリッドを得るためには構造の次元制御が重要です。次元制御することにより、センサ、高分子触媒、有機導電材料、感熱素子、太陽電池などへの応用が可能となります。
カルボキシル基含有アクリルシリコーンの開発
塗装板や金属など各種基材を汚れや傷から保護するためのストリッパブル塗膜が開発されている。市販のストリッパブル塗膜は物理的に剥離するように設計されているので、三次元曲面や入り組んだ構造のものには使用できません。そこで、基材との一体化を防ぐシリコーンブロックをもつアクリル樹脂に、カルボキシル基を同一分子内に持たせることで、汚れたときや保護が不要になったときに容易にアルカリ剤で化学的に脱膜できる塗工剤(CTS)の開発を行っています。
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