当研究室では、環境試料・法科学的試料・食品試料など様々な物質に含まれる成分の分析を行うため、新規分析法の開発を目指しています。具体的には、これらの試料に含まれる成分を原子吸光分析・ICP発光分光分析・吸光光度分析・蛍光分析・キャピラリー電気泳動法・マイクロ化学システムなどの分析法を用いて分析しています。


溶媒抽出
 工業排水中に含まれている貴金属の回収法の1つに、溶媒抽出法がある。当研究室では、抽出試薬として様々なチオエーテル誘導体を合成し、溶媒抽出を行っている。近年では、環境に無害である温度感応性高分子と抽出試薬との共重合体や、蛍光試薬を修飾した抽出試薬も用いている。検出には、原子吸光分析法及び蛍光分析法を用いている。

・マイクロ化学システム
 マイクロ化学チップにより、試料の前処理・反応・分離・検出など研究室で行われている操作を1枚のチップ上への集積化を行っている。

・キャピラリー電気泳動法
 環境試料(温泉水など)や法科学的試料(インク、化粧品など)、食品試料中に含まれる化学物質を測定する方法は様々あるが、それぞれが抱える問題は多い。そこで、迅速かつ簡便な測定法としてキャピラリー電気泳動法を用いた新規測定法の開発を行っている。

・ICP発光分光分析
 各成分元素に固有な波長位置での発光強度により、多元素同時定性・定量が可能なICP発光分光計により、食品試料中のミネラル成分や、温泉試料中の化学成分の測定法を検討している。

・吸光光度分析
 自動車排気ガスなどに含まれ、大気汚染物質のひとつであるNOxの基礎検討を、ザルツマン-吸光光度法により行っている。また実際に、神戸市東灘区住吉台にて環境試料を採取し、測定を継続している。




これらに加え、当研究室では新たに金属錯体を含むさまざまな無機溶液反応に関する広い意味での無機分析化学を展開していきます。

(1) 金属錯体を含むさまざまな溶液反応について、厳密な平衡定数測定と反応速度測定を行い、反応機構を解明します。
(2) 溶液反応機構に基づいて、より高感度・効率的な新規定量分析反応の構築など、分析化学への展開を図ります。

無機化学現象の定量的理解と分析化学への展開を目指して、溶液内化学種分析や反応メカニズム分析のみならず、目的に適した配位子や金属錯体の合成に至るまで、無機化学、分析化学のあらゆる手法を駆使して研究を行います。



テーマ

モノアザジチオエーテル誘導体を含有する温度感応性高分子の合成と貴金属の捕集挙動
PNIPAAmによる温泉水中のホウ素の分離
ホウ素の比色分析の研究